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伝説の名場面
2018年5月18日 B・I
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
皆さんは家族や友人などの自分自身にとって身近な人だからこそ、ふとした言動が印象に残るといった経験はないだろうか?私の中で今も色あせることのない名場面をある一人の少年にスポットを当てて紹介します。
とある休日、ドライブをしていると小学校のグラウンドが目に留まった。
「ナイスボール!」
「ナイスバッティング!」
そこでは野球の試合が行われており、両チームからの熱い声援が交錯していた。気になったので試合が見える位置で、車を路肩に止めしばらくの間眺めていたが、ユニフォームを汚しながら全力でプレーする姿に心打たれるのと同時に私自身が小学校で野球をしていた当時の記憶が甦ってきた。
小学校3年生の時に野球を始め、厳しい監督、コーチのもとで土日は一日中練習に明け暮れていた。周りのチームメイトにも恵まれ、数々の大会で優勝することができたので、チーム一丸となって勝つことの嬉しさを人生で初めて実感していた。その反面、試合に勝って当たり前という雰囲気がチーム内を流れるようになり、試合中での緊張感が日に日に増していった。
そういった昔の思い出に浸りながら目の前の試合を見ていると、ピッチャーの投げた球がバッターの頭に当たった。その場に倒れこみ心配した監督が選手に駆け寄ろうとしたが、バッターはすぐに立ち上がり、一塁に走っていった。ピッチャーとファーストが申し訳なさそうに帽子を取って頭を下げ、それに応えるようにバッターは手を挙げて大丈夫という合図を送った。
お互いを尊重しあうスポーツマンシップにのっとった素晴らしい光景だった。
恥ずかしながら私の時は違った・・・
チームメイトがデッドボールになると「痛い、痛い、大事な選手になにすんねん!!」
ピッチャーがストライクが入らない時は「ピッチャービビってる、ヘイ、ヘイ」
というような相手に言葉でプレッシャーをかけることを平気で言っていた。
今改めて思い返すとスポーツマンシップの欠片もない恥ずかしい応援だが、私のチームに限らず他のチームも含めて当時はそれが当たり前だった。良く言えば、どのチームも試合に勝ちたいという思いがすごく強かったので、その矛先が相手の弱みに付け込むことに繋がってしまったのかもしれない。
他のチームが力をつけていく一方、私たちも負けていられないと日に日に練習は厳しくなった。そんな私たちの心のよりどころがチームメイトで同級生のハシモトタクミ君、
あだ名「たっくん」だった。
たっくんはぽっちゃり体形で食べることが大好き、チームのみんなからいじられ、愛されていた。私がいうのもあれだが、野球の実力ではレギュラーメンバーに及ばず、控え選手としてチームを支えていた。ベンチでは誰よりも大きな声を出し、チームの雰囲気を明るくしてくれるムードメーカーだった。
たっくんに関してのエピソードはいくつもあるが、毎年夏に行われていた合宿での出来事はある意味で衝撃的だった。
山の中にある合宿所へはコーチや保護者が車を出し、選手が乗り合わせて向かった。その年は私の父親がマネージャーをしていたので、車を出し、私とたっくんその他数名で乗り合わせた。出発してから楽しい会話が続き、合宿所まであと少しの山道で事件は起きた。それまでみんなで楽しい会話をしていたが、ある一人の少年が急にしゃべらなくなった。
たっくんだ。
どうやら山道で右や左へ揺られるうち、車酔いしてしまったらしい。顔色がどんどん悪くなり、最悪の結果を考えた私は車内に袋がないかを探した。運転している父親にも確認したがどうやら車内に袋を用意していなかったらしい。車内に緊迫感が一気に流れた。
この状況で出来る事といえば、たっくんを励ますことだけだった。
「たっくん、あと少しだから頑張って」車内の全員が祈るような気持ちで見ていた。
すると、これまで苦しそうだったたっくんの表情が急に無表情に変わった。それを見ていた私は苦しさのピークを越え、少し落ち着いたんだと安心した。
と思った直後、最悪の結果が現実のものとなり、車内は一時騒然となった。
後日、本人がその時の心情を話していたが、無表情になった時、本人の中で何かを悟ったらしい。人の車に迷惑をかけてはいけない、けどもうダメだ。様々な感情が入り混じったあの横顔は今でもはっきりと覚えている。
これに負けず劣らずのエピソードがもうひとつある。
小学校6年生での最後の大会が終わり、監督、コーチ、選手、保護者による打ち上げが行われた。数々の思い出話に花が咲いたが、選手と保護者はこの打ち上げで行われるあるイベントを楽しみにしていた。そのイベントとは、これまでに自分たちの世代で獲得したトロフィーと賞状を分け合うというものだった。誰がどのトロフィーや賞状をもらうかは話し合いの結果、選手がじゃんけんをして勝った人から選べるという方法に決まった。選手同士が真剣にじゃんけんをした結果、勝ったのはたっくんだった。
たっくんとお母さんがどれにしようかとしばらく悩んでいたが、ふいにお母さんが一つのトロフィーを指差した。そのトロフィーは他のトロフィーに比べて一回り大きく、強豪チームを含め数多くのチームが参加する大きな大会だった。特に話し合いはしていなかったが、暗黙の了解でそのトロフィーはこれまでチームを支えてくれたキャプテンに持って帰ってほしいという配慮を皆が持っており、私も子供ながらにその空気を感じていた。
お母さんがそのトロフィーを指差した時は「えっ」と思ったが、たっくんがすぐに声をかけた。さすが、心優しいたっくんはチームメートのことを考えてくれてるなとこれまでの思い出を振り返りながら感じていた。
「決まりましたでしょうか?」という司会の呼びかけに対し、
「決まりました」とたっくんが大きな声で返事をした。
「これにします」とたっくんが指を差したのは
さきほどお母さんが指差した一番大きなトロフィーだった。
「たっくーーーーーん、それ選んじゃった」と誰もが心の中で思い、一瞬会場を静寂な雰囲気が包んだ。しかし、その静けさは一瞬で歓声と笑い声に変わり、この日一番の盛り上がりを見せた。たっくんが陰ながらチームを支え、明るくしてくれた功績は誰もが認めるものだった。そんなチームにとって唯一無二の存在だったたっくんにはそのトロフィーがふさわしく、一緒に野球が出来た事を誇らしく思った。
「今たっくんはなにをしているだろう?小学生だった当時から家で料理をするのが好きだったから料理人かな?」
そんな思い出に浸っていると、目の前の試合は終わっていた。ほっこりした気持ちになった一方、久しぶりにスポーツで体を動かしたいという衝動にかられた。
「とりあえずゴルフに行くか」そう思いながら車を走らせた。
当時私が在籍していた宮崎台バーズというチームは今でも残っています。チームのホームページも定期的に更新されていて、ふとしたときに確認しては当時の思い出にふけっています。
http://birds.89dream.jp/
ちなみに私が小学校6年生だったときの2003年の戦績はホームページの左側、過去の戦績から確認できます。
☆第二編集長 アクビちゃんの編集コメント☆
まるで短編小説を読んでいるかのような、青空の下、少年たちの白熱の試合を実際に眺めているかのような感覚。心地よく引き込まれる文章力…。素晴らしい。
そういえば、家事や育児にかかりっきりで、大好きだった読書をできずにいるなぁ。
頁をめくった時の、あの鼻先をくすぐるような紙の匂いが恋しくなってしまいました。
おそらくたっくんは無表情になった瞬間、ほんの一瞬だけ、無我の境地に達したのでしょうねw
特別な意味を持つトロフィーをあえて指名するというハートの強さを持ってしても、、山道の険しさには勝てなかったか…ww
最近アメフトの試合中でのスポーツマンシップに反した危険なタックル行為が話題になっています。お互い真剣勝負なのだから優しさは不要だと思いますが、相手へのリスペクトがないといけませんね。
どのスポーツにおいても私が素晴らしいと思う選手は、『感謝の心』を持っている人です。羽生結弦選手はリンクを降りるとき「今回もケガしないで済んだ、最後まで滑らせて頂いた」という意味を込めて必ずお辞儀をします。野球選手でもマウンドを降りるとき球場に向かってお辞儀をされる方いますよね。
あの精神がとても好きです。リスペクトがある!!
投稿者プロフィール
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新メンバーで業務部の「B・I」こと大島知弥。月初のブログ当番。彼が書く文章は実話に基づきながらもどこか小説風。しゃちょーから月初当番を任されるのには頷けます。資格試験の猛勉強も継続中!
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コメント
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伝説の名場面というか
「伝説の男」の話ですねwww
はなわの歌を思い出しました
なにげに2003年は輝かしい戦績じゃないですか
そりゃ大きなトロフィーもありますよね
私の時代も野次を飛ばすなんて当たり前でしたよ
デッドボール当てられて「大丈夫」とか手を挙げるだけなんて
先日亡くなられた衣笠みたいな小学生。。。
リスペクトがその世代にまで浸透しているのなら素晴らしいですね
ただ、最近はフェアな声援に変わってしまった甲子園(プロ野球)に
物足りなさを感じる私がここに。。。
少年野球(リトルリーグ)を見ると、
「メジャー」というアニメを思い出しますね。
デッドボールが頭に当たって、
その日は特になんにもなかったけど、
次の日に。。。