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一年前の大予言
2020年1月6日 B.I
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
令和2年1月1日
元号が変わってから初めての年越しということもあり、テレビでは各局お祝いムードが広がっていた。
私自身も当然新しい一年が始まったという期待や喜びに溢れていた・・・と思いきや、もう一年が過ぎたのかというマイナス思考が頭の中を埋め尽くしていた。
去年はどんな一年だったかな。
テレビから聞こえてくる笑い声を耳にしながら、一年を振り返った。
一言でいえば平穏無事だったような気がする。
平穏無事というと世間一般では良い意味で使われることが多いが、個人的には後悔という意味合いに近いものだ。
年齢を重ねていくと新しいことに挑戦していく機会は自然と減っていくので、年が明けたタイミングで今年はチャレンジする機会を増やしていこうとここ数年思っているが、結果を含めてこれといったものを残せていないような気がしている。
年間365日、8,760時間、525,600分、31,536,000秒をどう使うのか。
こんなことを考えている間に31,536,000秒のうちの数秒を使ってしまった、みたいなことを考えている自分が嫌になってくる。
気晴らしに数日溜まっていた新聞を読むことにした。
来年2月17日から2019年度分の所得税の確定申告が始まるため、節税に関する特集が組まれていた。
病気やケガなどで治療費や薬代などがかさんだ場合に税負担を軽減する医療費控除。
一年間に実際に支払った医療費が10万円を超えると一定の金額を所得から控除し、一緒に暮らす配偶者や子供などの医療費も算入できる。
この記事を読んで、人生で初めて入院した去年のことを思い出した。
入院当初、医師から絶対安静にして下さいということを強く言われていたので、ほとんどの時間をベッドの上で過ごしていた。
すると、入院3日目に4人部屋の内、空いていた私の隣のベッドにおじいちゃんが入ってくることになった。
どうやら明日腎臓の手術をして、経過を見ながら数日入院するということだった。
各ベッドは薄いカーテンで仕切られているが、ちょっとした音でも聞こえてしまうのが気掛かりだった。
明日の手術が心配なのか、時折深いため息が隣から聞こえてくるが、それ以外はまるで人がいないかのような静寂な空気に包まれていた。
翌日、手術を受けに行くため看護師さんと一緒に部屋を出ていったが、直前の看護師さんとの会話も元気がなかった。
それから数時間後、おじいちゃんが同じ人とは思えないほどの明るさで隣のベッドに戻ってきた。
「普段は健康そのものやからまさか手術するなんて思わなかったわ。看護師さん、ありがとう。」
その後は、鼻歌が聞こえて来たり、テレビを見て笑ったりとカーテン越しに明るく元気になったのが伝わってきた。
しかし、私はこの時おじいちゃんの明るさがのちに本性を見せることに繋がるとは知る由もなかった。
看護師は日中勤務と夜勤とで1日2人が交代で担当することになっていた。
交代のタイミングで毎回挨拶に来るが、手術後の夜勤で若い女性の看護師がおじいちゃんの担当になり挨拶に来た時から全てが始まった。
「失礼します。今日の夜勤を担当する〇〇です。よろしくお願いします。お体の具合はどうですか?」
「痛みは全く無いし、今すぐにでも歩けそうな気がするけど、ダメかな?少しでも体を動かしたいんだけど。」
「ダメですよ。なるべくじっとしておいてくださいね。それにしても元気すぎてこっちがびっくりしてます。」
「そうでしょ。この病院の近くに住んでるんだけど、ほとんど毎日自転車で箕面まで行ってるからね。70歳を超えてるけど見てこの足の筋肉。よかったら触ってもらってもいいけど、
ガハハハッ。」
明らかに看護師さんが対応に困っている様子が伝わってきた。
翌日、日中勤務を担当する別の女性看護師さんがおじいちゃんのところに挨拶に来た。
「今日の日中を担当する○○です。よろしくお願いします。そしたら最初にお熱と血圧を測りますね。」
熱を測っている間、看護師さんがおじいちゃんの体つきがしっかりしていることを何気なく言うと、それが引き金となったのか、
「そうでしょ。この病院の近くに住んでるんだけど、ほとんど毎日自転車で箕面まで行ってるからね。70歳を超えてるけど見てこの足の筋肉。よかったら触ってもらってもいいけど、
ガハハハッ。」
いやいや、ロボットか!
昨日と同じ会話だった。
これを看護師さんが変わるたびに聞かされるとなると、あと何回聞くのだろうと不安になった。
その日の午後、とある人物がおじいちゃんを訪ねて来た。
「もっとぐったりしてるのかと思ったら、案外元気そうね。」
「体調は今のところ問題ないけど、しばらくは安静にして下さいだってさ。」
「当たり前でしょ。先生や看護師さんの言うことはちゃんと聞かないとだめよ。」
「分かってるよ。」
「まさかとは思うけど、看護師さんに体の自慢とかしてないよね。家では私だから許されてたけど他の人には恥ずかしいから止めてよ。」
「してないよ・・・」
お見舞いに来ていたのは奥さんだった。
その会話を横で聞いて、看護師さんと話をする時とのトーンの違いが明らかだった。
家では奥さんの尻に敷かれているようだった。
女性の勘ってすごいなと思うのと同時にこれで筋肉自慢の会話にも終止符が打たれ、奥さんにただただ感謝だった。
そして、その日の夜勤、別の女性看護師さんがおじいちゃんのところに挨拶に来た。
筋肉自慢という武器を失ったおじいちゃんが少しおとなしくなるのを期待したが、看護師さんと話をするための次の話題をすでに考えていた。
「今、水しか飲んだらいけないって言われてるけど、コーヒーを少しだけ飲むのもダメかな?食事がお粥で飲むのが水だから味気なくて。」
「お腹に負担がかからないようにあえてそうしているので、もう少し我慢してください。」
「うーん、栄養たっぷりの野菜ジュースは飲んでいい?」
「ダメです!」
「看護師さんにそう言われたら仕方ないな。でも何だか怒られるのも悪くないから飲んじゃおうかな?ガハハハッ。」
この会話は翌日も続いた。
遠巻きに聞いているとなぜか探偵気分になり、この会話を録音すればこれほどの証拠はないだろう、みたいなことを考えるほど時間を持て余していた。
同じ会話を何度も聞かされる状況は私にとってつらかったが、おじいちゃんにとっては看護師さんとの会話が入院中のささやかな楽しみだったのだろう。
いけない、新聞の記事から入院中の嫌な思い出をついつい思い返していた。
新聞を読み終わり、何となく携帯でニュースを見ると、大相撲の大関貴景勝が初めてテレビCMに起用され、ヤクルトの本社でダチョウ倶楽部とCM発表会に参加したという見出しが載っていた。
大相撲というと、あの出来事をふと思い出した。
確かあれは入院5日目のこと、私が隣の筋肉おじいちゃんの会話が気になって仕方なかった時に、斜め向かいのベッドにこれまたおじいちゃんが入ってきた。
隣の筋肉おじいちゃんとは違い、日中は静かに過ごしているのだが、夕方のある時間になるとその本性が姿を現すことになる。
連日夕方になると近くに住んでいる娘さんがお見舞いにやってきて、約1時間ほどちょっとした盛り上がりを見せる。
その期間大相撲の11月場所が行われていた。
どうやら大関の貴景勝と小結の遠藤を応援しているらしく、その2人が勝つと小さな拍手が起こり、負けると残念な声が聞こえてくる。
そして何より驚いたのが、各取り組みに対する娘さんへのおじいちゃんの解説がびっくりするくらい専門的だった。
立ち合いの当たりかた、腰の高さ、肘の使い方、まわしの取り方、決まり手の名称・・・
私自身は実際の映像を見ているわけではないが、連日解説を聞いているとどんな取り組みなのかついつい気になってしまい、相撲中継を見るまでになっていた。
相撲なんかは単純に力がものをいうスポーツだと思っていたが、わずか数秒という取り組みの中に技術的な要素が詰まっていることをおじいちゃんの解説が教えてくれた。
ある時、おじいちゃんが娘さんにこう言っていた。
「体の小さい力士が大きい力士を倒すのがやっぱり一番の見どころだね。この前あったラグビーも大きい相手に立ち向かうという点では同じであれだけ盛り上がったんだから、もっと若い人に大相撲を知ってもらいたいんだけどね。」
それを聞いて娘さんが「ラグビーはチームスポーツで、相撲は個人だからちょっと違うんじゃない」と言った。
「確かに土俵が違うかな。」そう思いながら、完全にラグビー寄りの私は娘さんの一言に無意識にうなづいていた。
いけない、またもや入院中のことを思い返していた。
初詣では今年一年の健康を祈願することにした。
そういえば、去年おみくじを持ち帰っていたことを思い出し、引き出しから取り出した。
ふと内容を確認すると、
「病気 長引く、信心せよ」と書かれていた。
意味は一度病気になると長引く可能性が高いので、神様仏様を敬い、心と体を整えること。
そういうことだったのか・・・
おみくじ侮ることなかれ。
B.I氏、その節は大変でしたね(;;)退院したばかりの病み上がりでもブログを書かせる鬼編集長(ワタシ)をお許しください…。入院生活って本当にやることがなくて、眠りたくても家とは違ってなかなか眠れないし余計疲れませんか(^_^;)?それなのに「静寂」という唯一の友まで奪われた日には…w
私は人生で一度しか入院したことがありません。それも出産でだったので、周りは出産で疲れ果てた産婦さん達とホヤホヤの赤ちゃん達だけでした。1週間という期間限定だったことと、入院費用もなるべく節約したかったのであまりよく考えずに大部屋(6人だったか4人だったか)を希望したのですが、それが大きな間違いだった。。。この時の事を私は『地獄の1週間』と呼んでいます。最初は悠々自適に1人で使っていたのですが、次の日に1人、また次の日に1人、、とルームメイトが増えてきました。そこまでは良かった。その次にやってきたルームメイトは大声でカタコトの日本語を話していて、どうも中国の方のよう。このママさんがもうやりたい放題で(中国の方を批判してるわけではなく、あくまでもこのママさんがですよ!)、夜中でも関係なくテレビやYou Tube観まくり。もちろんイヤホンなし。テレビはテレビカードを買わないと見られないのですがそれを知らないのか砂嵐でザーザーうるさい画面を永遠にチャンネル回してて。。。しまいには大いびきで、泣いてる赤ちゃん無視で爆睡~!!!…慣れない授乳やオシメ替えで数時間も寝られていない私はもうヘロヘロ。ちなみにそのママさん、次の日ナースに「イタクテネムレナカッタノ。アカチャンミテテ。」と赤ちゃんを預けていた時は耳を疑いましたね。『ホワッタストレスフルワールド!!!!』(What a stressful world)←当時の私が友人に送ったメールには一言、こう書いてありましたw
投稿者プロフィール
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新メンバーで業務部の「B・I」こと大島知弥。月初のブログ当番。彼が書く文章は実話に基づきながらもどこか小説風。しゃちょーから月初当番を任されるのには頷けます。資格試験の猛勉強も継続中!
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