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笑ってはいけないプレハブ小屋
2021年 2月1日 B.I
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遡ること去年の10月、外出は極力控えている中でも
行かなければならない場所があった。
どこかというと、それは住んでいる市の警察署だった。
誤解を招くといけないので先に言っておくが、
別に悪いことをしたわけではない。
運転免許の更新が目的だった。
前回の更新は門真運転免許試験場に行っていたが、
三密回避で警察署での手続き、講習を事前予約しておいた。
そして当日、初めて市の警察署に着いたとき、
建物が古びた鉄筋コンクリートだったことに驚いた。
街の治安を守る警察署がこれじゃ威厳がないな、そう思った。
中に入ると、館内は薄暗く、建物の老朽化をより一層感じた。
事務作業をしているデスクを見ると、狭い空間の中で数人が密に仕事をしていて、
至る所で書類が山積みになっていた。
国は役所でのデジタル化を進めていくという方針を打ち出しているが、
現状目の前に広がる光景を見ると、
理想と現実との乖離があまりにも大きすぎると思った。
申請の手続きが無事終わり、
講習が始まるまで時間があったので入口付近の椅子に座り時間をつぶしていた。
警察官が頻繁に目の前を横切っているが、
男女関係なく我が物顔で歩いているのがすごく印象的だった。
警察官という名の肩書を背負うと、人って自然とそうなるのかと思ってしまった。
講習のスタートが迫ってきたので案内された場所に向かうと、
そこは敷地の隅にある古びたプレハブ小屋だった。
こんなところでするのか・・・
「すいません、講習を受けに来たんですけど。」
「2階に上がってお待ちください。」
びっくりするくらい細い幅の階段を上ると、
物置スペースにパイプ椅子が10個並べてあった。
「めちゃくちゃ密やん・・・」
そう思いながら待っていると、
「あら、やだ・・・」
という声が聞こえた。
振り向くと、ロングコートを身にまとったセレブ感漂うマダムが階段の近くにいた。
「たしかにマダムにとってはこの空間はきついだろうな」
椅子に座ってからも周りを見渡し落ち着きがなかった。
定刻になり椅子が埋まると、一人の男性が階段を上がってきて前で話し始めた。
「そしたら講習を始めます。よろしくお願いします。」
見た目は60代の小柄なおじさんだった。
講師として大丈夫かと少し不安になったが、
認定のバッジをつけていたのでそれを見て少し安心した。
私はその講師のおじさんを見た目から「講習おじい」と呼ぶことにした。
講習おじいが配った交通教本を見ながら話を聞いていると、
隣に座ったマダムが僕に聞こえるくらいの声で、
「ふんわりアクセル」と言った。
突然のことに驚いたが、どうやら全く違うページを見ていて、
気になったワードを無意識に口にしているようだ。
その後、あおり運転が近年増えているので、
こういう風に対応してくださいという真面目な話の途中で隣から
「ハイビーム」というのが聞こえた。
どのページを見てんねんと思い、
それがツボにはまり笑いそうになったが、
厳粛な雰囲気だったので必死にこらえた。
一難去ってまた一難、次の刺客がすぐに訪れた。
講習おじいが交差点のイラストの描かれたスライドを表示させた。
「この車が交差点で左折しようとしています。もし、皆さんが運転していたらどこに注意しますか。」
「そしたら、あなたどうですか?」
指名されたのは20代の男性だった。
その男性がイラストをじっと見ている間、沈黙が続く。
車の後ろからバイクがきてるから巻き込み注意やぞ、と心の中で思った。
長い沈黙の末、男性が口を開いた。
「交差点内で急に減速をしたら後ろの車に衝突される可能性があるので、早めに減速をする。」
その答えを聞いて、講習おじいが黙り込んでしまった。
おそらく予期せぬ答えに戸惑ったのだろう。
「それも確かに大事だけど、このイラストの状況で特に注意することってないかな?」
再び男性がイラストを凝視した。
次は大丈夫だろうと思っていると、しばらく考えて、
「反対車線を走っているトラックが急に右折してくる可能性がある」と答えた。
それを聞いて、講習おじいは即座に
「バイクの巻き込み注意ね」と言った。
男性はキョトンとしている。
何の時間だったんだと思うとおかしくなり、とっさに下を向いた。
私はこの男性を「だんまりお兄」と呼ぶことにした。
そしてようやく場の空気も落ち着き講習も終盤に入ったところ、
「交通事故を起こしたときには、運転者は負傷者を救護すること、
警察官に報告することが義務づけられているので必ずしかるべき行動をとってください。」
との説明があった。
全員が話をする講習おじいの方を見ていると、
突然置いてあった机の角に腰をぶつけて「痛っ!」と小声で言った。
「事故った!」
人の不幸で喜んではいけないが、事故の話をしながら自分が事故にあい、
それを全員がただただ傍観するという状況があまりにもリンクしていて笑いを誘発した。
この出来事ではさすがに数人の表情が緩んだが、
だんまりお兄の方を見ると依然として魂を抜き取られような表情をしていた。
「あ、もうこんな時間か。」
講習おじいが時計を見ると、講習の予定終了時刻が迫っていた。
「そしたら後は交通教本を各自読んでおいてください。」
どうやらまだまだ話さないといけないことはあったようだが、
その一言で講習は終わった。
わざわざ休みの日に足を運んで黙って話を聞くことを考えれば、
非日常の空間を味わえた点は良かったと思う。
警察署を出たとき目に飛び込んできたのは、
マダムとだんまりお兄が車の横で親しげに話す姿だった。
そして、それぞれの車に乗り込み同じ方向に去っていった。
その光景を見て、様々なことが頭をよぎったが、
生涯その答えにたどり着くことはないだろうし、
極端な話知ったところで何の得もない。
ただ、家に帰って交通教本の中で
「ふんわりアクセル」
というワードを探したことは言うまでもない。
レベストジャー・レッド
B.Iさん
免許の更新は忘れた頃にやってきますね。
レッドは一度更新行くのを忘れてしまっていて
もう少しで更新出来ない状態になりかけたことが・・。
講習では色々な人達が来ているので
そんな人達を観察するの楽しいですよね(p_-)
明らかに寝ていたのに寝ていないと逆ギレオヤジや
携帯の電源切ってくださいと言われたのにも関わらず
着信メロディーが鳴り響いて言い訳するお姉さん
自分では気がついていない貧乏ゆすりをし耳ざわりな音を発するヤツ
ペンをくるくる回すのはいいがそんなにうまくなくペンを落として音を発するヤツ
すごい鼻息の音がでかい人(これは身体の関係なのでしょうがないのですが)
どんな鼻の奥しているか気になる~~~~(^_-)
自分以外の人の行動・言動など気になると気になりますよね(*´∀`)
ただそんな人のことを気にしているレッドが
一番人から見られていたりして(;´Д`)
自分はちゃんとしていると思っていますからね٩(๑´0`๑)۶
必殺!!自分のことは棚に上げ!!
編集戦隊レベストジャー!!!!!
投稿者プロフィール
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新メンバーで業務部の「B・I」こと大島知弥。月初のブログ当番。彼が書く文章は実話に基づきながらもどこか小説風。しゃちょーから月初当番を任されるのには頷けます。資格試験の猛勉強も継続中!
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コメント
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「すべらんなぁ~」
月初めのレブログは
BIからと指名してから、
もうどれくらいたった?
2年半かぁ
「少年が思い出させてくれたこと」
2019.12は、わたくしのなか
でのベスト・ワンだね。
わたくしの我儘なんだけど
みごと期待以上の楽しさで
なかなか変える勇気がない。
これからも心に残るレブログ
を宜しくお願いしますね!
免許の更新ね!!
大阪と兵庫ではかなり
違いがあるのかな?
兵庫は、しっかりと密対策
してるように感じたけどね。
残念ながらブロクになるほどの
強烈キャラはなかったな・・・
わたくしの洞察不足かな?
さぁレベストも今月で
なんと24才!
立派な大人です。
気持ちや感情など伝えづらい
世の中でも、BIのような
純な気持ちでぶつかりあえる
ようなレベストでありたいね。