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駆け出しの探偵トリオ
2020年4月1日 B.I
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都会の喧騒とした雰囲気の中で日々生活していると、ふと息苦しさを感じることがある。
ゴルフ場に行く時に田園風景の広がる落ち着いた街並みを車で通ることが多いが、普段触れることの少ない自然に囲まれ、時間がゆっくりと流れていることにどこか安らぎを感じるのは私だけだろうか?
親が転勤族で人より多く引っ越しを経験していると思うが、都会を転々としてきたので、高層マンションや商業ビルが立ち並ぶ光景は割と小さいころから見慣れた光景になってしまっている。
大学四年生の秋、友人Aから突然こんなことを聞かれた。
「老後は都会と田舎どっちに住みたい?」
「郊外ぐらいがいいかな。」
「そんなひねった答えいらんから、都会か田舎の2択で!」
「その2択だったら田舎。」
「どうして?」
「老後は好きなことをして悠々自適にのんびり暮らしたくない?農業とかこれまで無縁だったけど、日々の時間の使い方を考えると案外楽しい気がするし、このご時世ネット環境が整っていれば情報難民になることもないしね。」
「分かるわ。俺も断然田舎。朝の満員電車とか街中の人混みとか、ただただストレスやわ。」
「俺は都会かな。」
横で話を聞いていた友人Bが言った。
「都会にずっと住んでると老後も都会?」
「田舎は生活するのに不便なイメージがあるけど、都会なら大体のサービスが近くで受けられるから便利で楽しみも多い気がするけどな。」
和歌山の田舎で育った友人Aと生まれも育ちも大阪の友人Bが話すのを聞いていて、子供の頃の環境がその人の根源に根付いているのを感じた。
都会に近い環境で育ったにも関わらず田舎暮らしに憧れる私は、気づけばそれぞれの持論に対して中立の立場で話をするようになっていた。
それぞれに良さがあるので、当然この議題に対して結論が出ることはなかったが、なぜか話の流れで三人でコテージに泊まりに行くことが決まった。
就職活動も終わり、大学生としての最後の思い出、並びに都会を離れての悠々自適な生活をみんなに体験してもらいたいという友人Aからの提案だった。
それから数週間後、レンタカーを借りて滋賀県のとあるコテージへ向かった。
夕方からバーベキューをする予定にしていたので、その道中にスーパーで食材を買い、着いたらどんなことをしようかという話で車中は盛り上がった。
目的地に着くと併設されている建物内のフロントで手続きを済ませ、宿泊するコテージへと向かった。
施設内には全5棟のコテージが一定の間隔をあけて建っていた。
緑に囲まれ、空気が澄んでいるという感覚を久しぶりに思い出し、時間も忘れてのんびりするにはこれ以上ない環境だった。
コテージ内に入ると3人で泊まるには広すぎる間取りと基本設備としてお風呂、ウォシュレットトイレ、テレビ、寝具、冷蔵庫、電子レンジ、調理器具、エアコンと快適すぎる環境に3人とも喜びを通り越して驚いた。
持ってきた荷物を置き、ひとまずソファーに腰掛けると、自然と体の力が抜けるような気がした。
これは移動の疲れではなく、日頃の生活で溜まっていたものを目の前の環境が浄化してくれているという感覚に近かった。
「雰囲気想像以上に良くない?」
友人Aが語りかけるように聞いてきた。
「うん、想像以上。普通に生活できるよね?」
友人Bが頷いた。
「ずっと都会が良いって思ってたけど、理想を言えばこんな別荘があれば最高かもね。」
「めっちゃ贅沢なこと言うやん。」
「せっかくだから近くを散策してみない?」
「行こう、行こう。」
そして、近くにある大きな湖を見に行くことにした。
対岸に広がる山林の緑と太陽の光に照らされ青く輝く湖面のコントラストが目に焼き付き、いつまでも眺めていられるそんな光景だった。
「季節が変わったらまた違った景色になるのかな。」
ふと、友人Bが言った。
「きっと変わるだろうね。」
「都会にいるとはっきりと四季を感じることって意外と少ないかもね。」
数秒の間、3人は無言で目の前に広がる景色をただただ眺めた。
「そしたら戻ってバーベキューの準備しようか。」
帰る道中に靴紐を結び直し、前の二人に追いつこうとしたその時、人がいるはずのない山林からカサカサっという音がした。
とっさに音の出る方向を見たが、変わった様子はない。
小さい動物でもいるのかな。
そう思い、走って前の二人に追いついた。
それでも気になったので後ろを振り返ると、遠くで人影が横切った気がした。
後ろを見ていた私に気が付いた友人Aが「どうした?」と聞いてきた。
「人影が通った気がして。」
「ここは一本道で湖に行く時から全然人を見てないから気のせいじゃない?」
「そうだよね・・・」
コテージに戻りバーベキューの準備に取り掛かり始めた。
下ごしらえをした食材を庭にある屋根付きのバーベキュー台に持って行き、各自好きなものをどんどん焼いて食べるスタイルだったが、ステーキや焼きそばは特に美味しかった。
バーベキュー台は使用後の掃除不要とのことだったので後片付けも比較的少なく大満足だった。
徐々に薄暗くなってきたので、コテージ内で飲み直そうとしたとき、友人Aが遠くを見つめていた。
「どうした?」
「あれ見える?」
友人の視線の先にはっきりと顔は分からないが、赤い帽子をかぶった男性がこちらをじっと見つめていた。
「あれ、誰?最初に手続きの案内をしてくれた人かな?」
「いや、違う気がする。」
友人Aが男性の方に歩き始めると、それを察知したのか視線の先の男性は足早に去っていた。
「なんか、気持ち悪いね。」
「明らかにこっちの様子を伺っていた気がするけど。」
湖から帰ってくるときに見た人影ってまさか・・・
嫌なことを思い出してしまった。
飲み直してお酒が進んでくると、普段なかなかお互いに聞きにくい恋愛話や将来の夢についても本音で楽しく語り合った。
実は3人には推理小説を読むのが好きという共通の趣味があった。
元々は私一人がはまっていたのだが、ある時から読み終わった本を回し読みするようになり、今ではお互いに面白いと思った本について語り合うことも増えていた。
「こういうコテージとかってよく事件の舞台になってること多くない?」
「プライベートな空間でずっと一緒にいるから犯人目線でいくと監視がしやすいからね。
周りにはほとんど人がいないし、好都合なんじゃない。」
「一方で捜査は身内から疑いをかけられるのが一般的だから、人数が少なすぎると逆に諸刃の剣になりかねないのは注意点だね。」
「大概は前日とかに用意周到に準備をしてるイメージが強いかも。」
つけっぱなしにしていたテレビではこの周辺の地元に関するニュースが流れている中、しばらくの間推理小説談議で盛り上がっていると、一つのニュースが目に飛び込んできた。
今日のお昼頃、市内で通行人を襲い、財布を奪う窃盗事件が起きており、犯人は現在逃走中ということだった。
事件現場の地図が表示されたが、ここから意外と近い場所だったのでびっくりした。
「まさかとは思うけど、さっき見た赤い帽子の人違うよね?」
友人Bが不安そうな声で言った。
「違うでしょ。こんなコテージに来るかな?」
「もしこの場所を知っているとしたら、一旦身を隠すには最適な場所だと思うよ。」
「犯人目線で考えて見ようよ。」
「計画的な犯行だとすれば、事件を起こした後はひたすら遠くに逃げるか、もしくは事前に決めておいた隠れ家に潜伏するかじゃない?」
「現実的には自宅に身を隠す犯人も多いだろうけど、推理小説的にはその先の展開に欠けるから面白くない気がするな。」
「犯人にとってはその事件についてニュースでリアルタイムにどういう報道がされていて、どこまでの身元が割れているのかは当然知りたいよね。」
「テレビは全コテージについてるよ。」
「この時間に電気が点いてなかったらまずお客さんが来ることはないから空いてるところに潜入できれば翌朝までは安心だもんね。」
「仮に僕が犯人だったら事前にコテージの予約を入れておくよ。」
「僕も賛成。計画的に犯行を行うのであれば、当然そこまで考えておくほうがむしろ一般的じゃないかな。」
「残り4つのコテージの内3つはお客さんがいて、斜め向かいのコテージだけは空いてたと思うよ。さっきも電気が点いてなかったし。」
何気なく友人Bが窓からそのコテージの方を見た。
「斜め向かいが空いてるんだよね。」
「そうだよ。」
「ロフトだけ電気が点いてるけど。」
「え、ほんとに!」
足早に確認すると確かにロフトの電気だけ点いていた。
「なんでロフトだけ・・・。あっ、人影。」
「誰かいるね。」
しばらく見ていると、ロフトの電気が消えた。
はたから見ると、無人のコテージだ。
でも誰かが中にいる。
「遅い時間に来たお客さんだよ、きっと。飲もう、飲もう。」
友人Aが自分自身に言い聞かせるようにそう言いながらソファーに腰掛けると、
「あっ、ドアが開いた!」
友人Bの一言ですぐさま窓際に戻ってきた。
出てきた人はその場で周りの様子を伺っているようだった。
「誰?」
「もうちょっと明るいところに行ってくれないかな。」
薄明りのある方に歩き始めたところで、ようやく顔が分かった。
「あれは・・・」
「最初に手続きしたフロントのおじさんだわ。」
「なんだよ、片付けか明日の準備でもしてたのかな。」
疑惑も晴れ、飲み直していたが、ニュースを見る限り犯人はまだ捕まっていないようだった。
楽しい会話が続き、そんなことを忘れかけていた時に突然玄関のドアを叩く音が聞こえた。
「こんなときに誰かな?」
「そこの窓から見えない?」
友人Aが玄関方向を見たのち、驚いた表情でこちらを見た。
「赤い帽子を被ったおじさん。」
「えっ、さっき見た人?」
「おそらく」
「どうする、出る?」
「でも、出ないと不自然だよね。向こうはいることが分かってるから。」
「3人でスクラムでも組んで出る?」
「いやいや、気持ち的には分かるけど、ドアを開けて目の前にスクラムを組んだ3人がいたらやばいでしょ。」
「確かに、想像しただけで笑っちゃうね。」
こんな会話をしている間も絶えずドアはノックされている。
「とりあえず3人で出よう。」
「そうしよっか。」
玄関前に移動し、「開けるよ」という友人Aの一言を皮切りにドアを開けた。
赤い帽子を目深に被った30、40代の男性が真っすぐにこっちを見て直立していた。
「どんな御用でしょう・・・」
独特の緊張感に包まれた。
「夜、遅くにすいません。実は・・・私ここの施設の管理を担当している者なんですが、この近くで窃盗事件があったらしく犯人が現在逃走中みたいなので、くれぐれも戸締りをお願いします。もし何か不安なことがあれば名刺をお渡ししておくので、こちらの電話番号にかけて頂ければ結構です。それでは失礼します。」
男性はそそくさと帰っていった。
「だってさ。」
「もうちょっと愛想良くしてくれてもいいのにね。」
「スクラムを組まなくて良かったね。」
「変なお客さんが泊ってるって噂になるところだったよ」
緊張感が解け、お酒の酔いが回り始めた。
お風呂に入り布団でゴロゴロしているといつの間にか寝ていた。
どこからか鳥のさえずりが聞こえ、目が覚めた。
朝、テレビでニュースを見ると、窃盗犯は市街地で捕まっていた。
モーニングコーヒーを片手に外に出ると、冷たく澄んだ空気が全身を包んだ。
やっぱり老後は田舎かな・・・
少子高齢化が進み、将来定年が延長されるのではないか、年金が減額するのでないかという不安が社会を取り巻いている。
若くして老後のことは正直考えたくないが、今からでも何かしないといけないのではという気持ちが心の奥底でうずいている。
経済学部で世の中のお金の動きや金融政策などの専門的な知識を勉強してきたが、景気の「気」は気持ちの「気」、私たち個人が消費をしてお金をどれだけ循環させるかが結局のところ一番大事らしい。
このままでは将来を不安に考える若者がますます増えるような気がする・・・
大学の講義で学ぶ俯瞰的な勉強ではなく、一個人としてこの問題を身近に感じた瞬間だった。
なんか、自然と触れ合ったのほほんストーリかと思いきや、ホラーサスペンスやん!?
ハラハラドキドキ~ヽ(゚д゚ヽ)でも、サスペンスは最初っから犯人とか真相が分かってるやつで、
ミステリーは読みながら謎を解き明かしていくやつやからこれは、正確にはミステリーやな!
一緒に謎解きするって楽しみもあるからタコはミステリーのほうが好きやで(*’v`)b
好きやけど、好きやけども!!そらもちろんドラマとか小説専門で。やで?
そんなんホンマにこんな状況になったら、怖すぎて無理やもん(*_*)
タコはビビリやからちょっと脅かされただけでめっちゃ大声だしてまうから一番先にターゲットにされるわ((((;゚Д゚)))田舎か都会やったら夜でも外が明るい都会がいい!ビビりだもんでσ(^_^;)
投稿者プロフィール
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新メンバーで業務部の「B・I」こと大島知弥。月初のブログ当番。彼が書く文章は実話に基づきながらもどこか小説風。しゃちょーから月初当番を任されるのには頷けます。資格試験の猛勉強も継続中!
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