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エピソード3_「悔いなき決断」
2021年 6月 1日 B・I
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エピソード3_「悔いなき決断」
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青木京介・・・ライフロボティクス勤務、プロジェクトリーダーを任せられる
新井俊哉・・・ライフロボティクス勤務、入社3年目で青木を支える後輩
一ノ瀬希・・・青木の恋人
進藤誠也・・・㈱一橋テクノロジー ロボット事業部 勤務、希の元彼
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「即戦力の人材としてウチに来ないか?」
青木は一瞬冗談ではないかと思ったが、
先ほどまでの柔和な表情とは違う
進藤の真剣な表情が本気度を物語っていた。
「大事な話って希のことじゃなかったんですね・・・」
「もちろんその話も今日しないといけないと思ってる。
でもその一方で、今後ウチの会社が成長するために
青木君の力が必要だということをどうしても伝えたかったんだ。」
「僕が即戦力で会社の役に立てるかどうかは分からないですよね。」
「青木君もこの業界に長く携わってるから
分かってくれると思うけど、
知識と経験を身につけるにはそれなりの時間が必要だよね。
ライフロボティクスは少数精鋭で青木君が
色々なプロジェクトに携わってきたことは想像がつくし、
大学のロボット研究部で誰よりも好奇心と向上心を持って
取り組んでくれたことはすごく印象に残ってるよ。
その若さでこれまで積み上げてきた知識と経験、
そしてウチの会社の持っているノウハウを融合させて
社会に新しい風を吹かせてもらいたいというのが
会社からのメッセージだと思って欲しい。」
普段、自分の存在意義をこれほどまで
ストレートにぶつけられることがなかったので、
嬉しさと恥ずかしさとが同時に押し寄せた。
「そういったお話を頂けるのは素直に嬉しいですが、
僕は自分自身のことをまだ一人前とは思ってないですし、
何よりこれまで支えてもらった会社に対してこれから
恩返しをしていかないといけないと思っています。
将来どのような道に進んでいるかは分からないですけど、
少なくとも今は目標に向かって与えられた役割を
果たさないといけないので、その話は受けられないです。」
「そうか・・・。それは残念だけど、
会社に対する思いを聞くと本当に惜しい人材だと思うよ。
これ以上そのことについて話すことはないので、
心に留めといてもらって、
あとは彼女と僕との関係についてだけど話はどこまで聞いた?」
「全部彼女が話してくれました。」
「落ち込んでなかった?」
「落ち込むというよりはお互いびっくりして、
こんなことってあるんだねっていう話をしたんですけど、
別に誰が悪いというわけでもないので、
過去のこととして受け入れようという話になりました。」
「なんか申し訳ない気持ちで一杯だけど、
冗談抜きで2人の幸せを願ってるから。」
最後はしんみりとした感じでお開きとなった。
帰り際、ふと空を見上げると綺麗な満月が浮かび上がっていた。
転職なんてこれまで考えたこともなかった。
会社に対して不満があるわけではない。
自分自身が手掛けたロボットで
世の中の困っている人を助けたいという
思いは入社以来変わっていない。
日々自分が出来ることを追い求めていれば、
その思いも現実になるだろうと思っていたが、
自分自身を取り巻く環境が人生に与える影響は
決して小さいものではなかった。
世の中に自分を必要としてくれる場所があることを知り、
久しぶりに自分の将来について客観的に考えて見ようと思った。
考えた末に、そもそも働くって何なんだろうという
疑問にいきついたが、すぐにその答えは出なかった。
新商品発表会まで残り2週間となり、
販売戦略の打ち合わせを日々行っていたところ、
「青木さん、大変です!」
いつもは冷静な新井が慌てた表情で駆け寄ってきた。
「どうした?」
「奥田機工と新商品に使用する
部品調達のスケジュールについて話をしてきたのですが、
しばらくの間調達できない事態になりました。」
「理由は?」
「何かしらのトラブルで海外から原料を輸入出来なくなったそうです。」
「奥田機工以外にその部品の製造を担える会社はないぞ・・・。
とりあえず解決策を考えておくから他にできることをしといてくれ。」
「分かりました。」
一つの成功を得るためには、
何度高い壁を超えないといけないのだろう。
しばらくの間、目を閉じ心の中を落ち着かせた。
新商品の発売時期を後ろにずらすべきか?
いや、それは会社の信頼低下に繋がりかねない。
とすれば答えは一つ、
新たな部品調達先を探さなければならない。
条件は高度な加工技術を持ち、
オーダーごとに臨機応変に対応できる会社だ。
手あたり次第に会社をピックアップしていては時間がかかりすぎる。
この非常事態を解決するためには思い切った決断が必要だ。
できればこんなことはしたくないが、
頭の中にある案を実行せずにはいられなかった。
このプロジェクトで共に汗を流し、
努力してくれた仲間のために
なんとかしたいという思いが前に歩を進める原動力だった。
「失礼します。」
青木はライフロボティクスの創業者であり、
代表取締役社長の神村に相談を持ち掛けようと社長室を訪れた。
「どうだ、プロジェクトは順調か?」
「完成品は出来たので、新商品発表会は問題ないと思います。
ただ、今後の販売戦略で一つ問題が・・・」
奥田機工から部品供給が見込めないこと、
それによりどのような影響があるのかを話した。
「解決策はあるのか?」
「明日にでも東亜鍛工に連絡をとって、
アポイントを取りたいと思っています。」
先日新井から部品調達停止の話を聞いた後、
青木はある人に電話を掛けた。
「はい、進藤です。」
「青木です。お久しぶりです。」
「急に電話なんて珍しいね。どうした?」
「取り入ってお願いがあります。
直接会ってお話をしたいのですが
予定を開けて頂くことは出来ないですか?」
一瞬の沈黙の後、
「明日の夜、前と同じ場所でどうかな?」
おそらく進藤は私が心変わりしたと淡い期待を抱いたことだろう。
申し訳ない気持ちと、
これで後には引けなくなった覚悟とが
自分の中で共存していた。
翌日、待ち合わせ場所で待っていると
仕事終わりでスーツ姿の進藤が足早に駆け寄ってきた。
「ごめん、仕事が押しちゃって。行こうか。」
お店に入り席に着くなり、青木は本題に切り込んだ。
「進藤さんは以前、多くの会社を訪問して
部品調達先のサプライチェーンを築いていたんですよね?」
「一時期はそれがメインの仕事で日本全国色々足を運んだこともあったね。」
「実は新商品の発表に合わせて
部品の増産をお願いしようとしたところ、
先方の都合で調達が出来なくなってしまい、
一刻の猶予も許されない状況なんです。
無理も承知なのですが、
会社を紹介してもらえないでしょうか?」
「同業他社に助けを求めるなんて相当大変な状況そうだね。
青木君の性格からしても
本当はこんなことしたくないんじゃないか?」
「このプロジェクトは僕一人でしているわけではないんです。
長い時間をかけてみんなで作り上げてきたので、
成功するために今自分が出来る最善の方法だと思っています。」
「そこまで言われたら断りづらいな。
これはあくまでも親友として話すのであって、
会社の繋がりで教えてもらったとか言わないでくれよな。」
「分かりました。お約束します。」
「さすがに今ウチと提携している会社は教えられないので、
過去に狙っていた会社で断られたところだったら大丈夫かな。
東亜鍛工って知ってる?」
「聞いたことないです。」
「建物の外観はいわゆる町工場なんだけど、
実は有名企業から精密部品の依頼が次々にきている会社で、
部品の製造加工技術はトップクラスみたい。
規格品ではなくてオーダーに合わせて
すぐに対応できるところが強みみたい。」
「まさにウチが今探している会社にピッタリです。
でも、一橋テクノロジーからの誘いを断る会社とかあるんですね。」
「交渉事なので深くは話せないけど、
会社として大事にしているものがあるみたい、
とだけ言っておこうかな。」
そのような話があった翌日に
社長の神村に相談をしていたのだった。
「迷っている暇はないな。
まずは何とかアポイントを取ってくれ、
俺も同行する。
自分たちがこれまでやってきたことを信じて、
その思いを一緒に伝えよう。」
アポイントは無事取ることが出来た。
打ち合わせ当日、
会社を訪れると外観はまさに町工場そのものだった。
その見た目からはまさか部品の製造加工技術で
トップレベルの高度な技術を持った会社だとは思わないだろう。
深呼吸をして建物に足を踏み入れた。
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」
案内された部屋で待っていると、
二人の男性が笑顔で入ってきた。
代表取締役社長の岸田と副社長の清水だった。
「本日はお忙しいところお時間を作って頂きありがとうございます。」
「いえいえ、とんでもない。
私たちも数少ないビジネスチャンスは逃したくないので。
さっそくですが、どのような部品の
製造を弊社で検討されていますか?」
「介護や建設現場で負担を軽減するために
身につけるロボットの部品になります。」
「なるほど。私たちは自分たちの製造する部品、
いうなれば加工技術に誇りを持っています。
人手も限られているなかで、
いかにして社会の役に立てるかを創業以来大切にしています。
弊社を期待して頂いているお客様を選別するようで
大変心苦しいですが、御社のロボットが
今後の社会でどのような役割を果たすのかを
お聞かせ願えますか?」
これこそが、
先日進藤さんが話していたことだったのかと頭の片隅で思った。
横に座っている社長の神村がこちらを見て大きく頷いた。
青木はプロジェクトリーダーとして、
ロボットに人生をささげてきたものとして口を開いた。
エピソード4(最終章)「ここにいる理由」へ続く・・・
レベストジャー・イエロー
B・Iさん
佳境を迎えてまいりましたね(^_-)-☆
来月が最終章ということは、完結ですね∠( ゚д゚)/
どんな最終を迎えるのでしょうか?
もしかして
巨大惑星が!
巨大怪獣が!!
レベストジャー出動!!!
なんて展開にはならへん!ならへん!
わかっているけど毎回ドキドキなぜでしょう(^_^;)
いつでもこちらは用意しておりますので(*´艸`*)
イエローだけでも出演できないかな~~~~(^_^;)
そんな無理な期待をしておりますが(*´艸`*)
来月完結です∠( ゚д゚)/
どうゆう展開になるのでしょうかね(^_-)-☆
来月が楽しみですね(๑´ڡ`๑)
編集戦隊レベストジャー!! !!!
投稿者プロフィール
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* * * * *
新メンバーで業務部の「B・I」こと大島知弥。月初のブログ当番。彼が書く文章は実話に基づきながらもどこか小説風。しゃちょーから月初当番を任されるのには頷けます。資格試験の猛勉強も継続中!
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コメント
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B.I.さん♪
今回も引き込まれて読んでしまいました。
次回が最終章ですか!
ロボット作りは成功するのか?
京介と希の関係にも何か進展があるのでしょうか?
次回(7月!!)も楽しみにしています^_^
寺ママは普段、読む小説はミステリが中心なので、どういうスタンスで読んだら良いのか戸惑ってます。
好きな作家の本は何冊も読むので、似たようなエピソードが複数の作品にあると、その作家の実体験かな?って思うことがあったり、その作家の考え方みたいなものを垣間見る事があります。
大抵の小説家や漫画家は舞台となる業界の取材をしており、巻末に取材協力者にお礼の言葉があったりします。
で、BIクンは想像だけで書いてるの?
とか、恋愛模様に実体験が含まれてたりして。
とか、下世話なことを考えてしまいます(´Д` )
毎回楽しく読んでます。
本業の作家さんのWEB小説を読んでるような気持ちで読み進め、
「あ、そうだ、これってBIの小説だった・・・」
って毎回なるんですけどww
もう最終章ですか。
どうなるのか楽しみなのと、終わってしまう寂しさがありますね。
そんな気持ちになりつつ、「あ、これってBIの小説だった」となりつつ。
とにかく来月が楽しみです。
個人的にはどんでん返しが好みですので宜しくお願いします(謎)
おもしろ〜い!
なんか「下町ロケット」読んでるような
そんな楽しさがありますね。
BIさんの文章だと忘れてしまうくらい、
引き込まれていきますよ。
次がもう最終章かぁ〜
まだまだ話しの続きが見てみたいような。。。
来月楽しみにしています!
さて今日から
35期、新年度の始まり、始まり〜
BIさんの小説のように、新境地を
切り開いていくど〜!!