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20194/1

勝利の女神

2019年4月1日 B.I 
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

 

私の心に穴を空けていた空白の五か月が今まさに終わりを迎えようとしていた。

五ヶ月前、その出来事が終わると夢破れた少年のようにただただ落ち込んだ。

毎年同じ時期に終わりを迎え、そしてこの時期にスタートするのは分かっているが、生活の一部として当たり前のように存在したものが急に無くなると気持ちの整理がつかなくなる。

いよいよかという楽しみを噛みしめるようにテレビの前でいつものように横になりその時を待った。

テレビから聞きなれた音楽が聞こえ、映像に映る人々のボルテージの高さがこちらにも伝わってきた。

「プレイボール!」

待ちに待ったもの、それはプロ野球の開幕だった。

その瞬間、私の中に存在し続けた五ヶ月の空白は風のように消え去り、新しい希望の風が舞い込んできた。

一足先に開幕した選抜高校野球と重なるこの時期は時間があればテレビの前にいる時間がついつい増えてしまう。

いや、むしろ野球の試合を観ることを中心として一日のスケジュールを立てることも珍しくない。

高校生が夢の舞台である甲子園ではつらつとプレーする姿を見ると、ついつい自分の野球人生を振り返ってしまう。

高校の時の一番の思い出といえば・・・

(下記ストーリーに出てくる人名は仮名です。)

 

 

高校三年の春、これまでチームを支えていた先輩が卒業し、チームを引っ張っていく立場に変わった。

引継ぎで何故か私が副キャプテンに指名されたことには驚いたが、キャプテンを任された俊哉のサポートなら何とかなるだろうと軽い気持ちだった。

まず最初の大きな仕事は新しく入学してきた一年生へのクラブ紹介だった。

興味のある人には実際に練習を見てもらい、その後個別に質疑応答を受けた。

そして今日、入部志願者が集まる運命の日を迎えた。

授業が終わり、集合場所であるグラウンドの一角へと向かった。

集合時間まではあと二十分、期待と不安が入り混じった気持ちで落ち着かず、その場をウロウロしていた。

すると、こちらに向かってくる人がいることに気付いた。

よく見ると一人の女性だった。

この奥にあるテニスコートに行くのかと思っていると声をかけられた。

「あのー、すいません。ちょっとお聞きしたいんですけど。」

「はい、何でしょう?」

「野球部ってマネージャーの募集はしてるんですか?」

「マネージャーですか・・・」

想定外の質問に言葉を詰まらせた。

現在マネージャーはおらず、いないのが当たり前だと思っていた。

その場に居合わせていた数人のチームメートと顔を見合わせたが皆が首をかしげている。

「一度顧問の先生と話をさせてもらってもいいですか?」

「分かりました。お願いします。」

「一応確認だけど、もしマネージャーがOKの場合前向きに検討してるってことでいいかな?」

「もちろんです。」

「そしたらクラスと名前を教えてもらっていい?」

「1年2組の青山美織です。」

「青山さんね、そうしたら後日決まり次第こちらから伝えに行きます。」

「すいません。お願いします。」

そう言うと、駆け足で校舎の中に消えていった。

再びチームメートと顔を見合わせると、全員が無言のまま笑顔になった。

その瞬間、考えていることは同じだと察した。

「かわいらしい子だったね。」そう切り出すと、

「間違いない。先生との交渉大事だよ。」

「その前に俊哉とチームメートの意見を聞かないといけないね。」

少し遅れて俊哉がやってきた。

「遅くなってごめん。クラスで放課後に決めないといけないことがあって。」

その後、一人また一人と入部希望者が集まり、計七人の入部が決まった。

全員が中学で野球経験があったので、チーム力の底上げも期待でき、キャプテンと一緒に喜んだ。

入部が決まった七人へは最初の練習日を伝え、その場は解散となった。

俊哉は仕事を終え、安堵の表情を浮かべているが、あの件を伝えなければならない。

「一つ相談なんだけど・・・」

「何その浮かない表情、なんか怖いな。」

「いや実は俊哉が来る前に女の子が一人来てマネージャーの募集はしてるんですかって聞かれたんだけど、どう対応したらいいか分からなかったから顧問の先生と話をして後日伝えに行くことにしてるんだけど率直にどう思う?」

「マネージャーか。正直なところ練習や試合に来てもらってもあんまりすることがないような気がするけどな。」

「あ、一つ言い忘れてたけどその女の子・・・かわいらしい人だったよ。」

周りのチームメートが大きく頷いている。

「・・・確かに本人が入りたいって言ってるんだからその思いを尊重しないとね。

サッカー部とかバスケ部にマネージャーがいるのうらやましかったからね。」

さすがキャプテン。自分自身含め高校生の男子は単純だ。

「そうと決まれば、あとは顧問の平松先生を説得しないとな。」

誰よりも前向きな姿勢を見せ始めたキャプテンと副キャプテンである私が代表して話をすることにした。

その日の練習が始まるまでマネージャーの必要性を絞り出すように考えた。

練習が始まる直前、平松先生がグラウンドに姿を見せた。

「先生、お疲れ様です。」俊哉が切り出した。

「お疲れ様。どうだった、新入部員の集まりは?」

「七人の入部が決まりました。全員が経験者らしいのでチームとして楽しみな一年になると思います。」

「それは良かった。二、三年生もうかうかしていられないね。」

「あと実はもう一人入部希望者が来たんですけど・・・」

「どういうこと?」

「女子マネージャー希望なんですけど。」

「へえー、別にみんなが良ければ入ってもらって全然構わないけど。」

「チームとしてはついさっき話し合いをしてOKという結論になりました。」

「そういうところを決めるのは早いな。普段からそれぐらいてきぱき行動してくれたら嬉しいんだけどな。でもみんなで面倒を見てあげないとだめだからな。」

練習前のミーティングで女子マネージャーの入部が決まったことを伝えると自然と拍手が沸き起こった。

その光景は野球部に入って一番チームが結束する瞬間だった気がした。

 

そして、一年生との初めての練習日である土曜日を迎えた。

二、三年生の誰もが一年生の実力をチェックしていた。

肩の強い人、バッティングで遠くに飛ばす人、足が速い人、すぐにでもレギュラーを取りそうな目を見張る人が数人いた。

チームメートであり、ライバルとなる新たな存在に感化されたのか練習の雰囲気が大きく変わり、着実にチームとしてのレベルが上がっているのを感じた。

そしてチームとしての士気をさらに高めてくれたのが青山さんの存在だった。

他に習い事をしているらしく、平松先生と話し合いの上、部活動に参加するのは月・水・金の放課後と土・日で試合の入っている日ということになった。

今日は試合をする日ではないが、練習内容やマネージャーの仕事を知ってもらうために来てもらった。

かわいらしい見た目とは裏腹に、自分から積極的に分からないことを聞きに来たり、チームメートに対する気配りに長けていたりと紅一点チームを支えてくれる存在だった。

そしてそれは試合結果にもすぐに表れ始めた。

去年までは五試合のうち一勝、二勝しか出来なかったのが、三勝、四勝出来るようになり、負けたとしても最後までもつれる試合になっていた。

 

ある日の練習前、チームメートである三年生の翔太が話しかけてきた。

「今年のチームは違うね。青山さんという名の勝利の女神がベンチにいるからだろうね。

みんないいところ見せたいだろうし。」

「そんなこと言って一番意識してるの翔太だと思うけどな。」

「あ、ばれてた。だって、試合のときホームを踏んでベンチでハイタッチするときのあの笑顔見たことある?やる気倍増やろ。」

「その正直なところが翔太のいいところだけどね。」

「そんなこと言うけど、お前も少しくらい意識してるやろ。正直じゃないなー。」

「うるさいわ。」

 

三年生となり初めての公式戦の日を迎えた。

会場に着くなり公式戦独特の緊張感が押し寄せ、いつも明るいチームの雰囲気は見る影もなくなっていた。

私たちの一つ前の試合を見ながら、個々に体を動かしていると、チームメート一人一人にお茶を渡しに行っては笑顔で会話をしている青山さんの姿があった。

おそらく外から見ていていつもと違う雰囲気を感じ、彼女なりにそれをほぐそうとしての行動に、改めて感心させられた。

今日の対戦相手は何度か練習試合をしたことがあったが、終盤までもつれる試合が多く、接戦になることが予想された。

予想通り、試合は一進一退の展開のまま同点で最終回の攻撃に入っていた。

一本出ればサヨナラ勝ちというところで次のバッターは翔太だった。

この回の攻撃が始める前に翔太と会話をしていた。

「打順的に翔太のところでチャンスがくるかもな。」

「今日打ててないから最後においしいところ頂こうかな。」

「よし。ヒーローになってこい。あの子も祈るような表情で見てるぞ。」

「よっしゃ。燃えてきた。」

バッターボックスに向かう翔太を見てこれはダメだと思った。

「ロボットか!」

手足ガチガチ、緊張で無表情だった。

バットに当たれば何かが起こる、そんな願いもむなしく三振だった。

ベンチに帰ってきた翔太は何事もなかったかのように私の横を陣取り、

「今日はこのぐらいにしといてやろう。」と小声で言った。

緊迫した試合展開の中、緊張がゆるみ笑いそうになったが、必死に耐え、応援を続けた。

次のバッターだった期待の一年生が何事もなかったかのようにヒットを打ち、サヨナラ勝ちとなった。

その瞬間全員がベンチを飛び出し、サヨナラヒットを打った選手をねぎらった。

「ナイスバッティング!さすがだね。」青山さんがその選手とハイタッチを交わしていた。

チームとしては喜ばしい光景だった、ただ一人の思いを除いては。

ちらりと翔太を見ると一見笑っているように見えるが、その奥に見え隠れする悔しさ、羨ましさが隠しきれていなかった。

「後輩に対するこれ以上ないお膳立てをしてしまったわ。」

「でも、チームも勝って次のチャンスがあるわけだし、次見返したらいいじゃん。」

「よっしゃ、次のヒーローは俺だ!」

 

 

その後、この大会で翔太が輝くことはなかった。

 

 

二年生からチームの中心選手としてレギュラーで活躍してきた男は一つの出来事をきっかけに自分自身を見失っていた。

野球が上手くなりたいという真っすぐな思いと、かっこいい自分を見てもらいたいという曲がった考えは両立しなかった。

二兎を追う者は一兎をも得ず。

スポーツにおけるメンタルの重要性を再認識した瞬間だった。

 


maou

maou(父)

涙で、涙で、画面がにじんで文字がもう読めないでごじゃる(;_;)。
勝利の女神が誰かに微笑みかけるとき、
別の人には背中を向けているのでごじゃります。
高校生という若さでそのことに気づかされたこと、それは、
人間としての成長を一歩進めることができたということでごじゃるよ。
自分に傷つき、それを乗り越え自分に優しくなれることで、
いつしかたどり着いてしまう。。。大賢者への道、
それがこの時、翔太(仮名)の眼前にはっきりと見えたのでごじゃりましょうな。
幸あれ。

 

投稿者プロフィール

B・I
B・I

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新メンバーで業務部の「B・I」こと大島知弥。レベスト男性社員で一番の若手です!数々の資格保持者。

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