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エピソード3「キャッチフレーズ」
2023年 3月 1日 B・I
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北野理沙・・・文具メーカーの営業所属
飯島智美・・・文具メーカーの総務経理所属
大江真理奈・・・文具メーカーの商品開発部所属
山岸恵一・・・北野と仲の良い文具店の店長
滝口奈海・・・出版社に勤めている北野の大学時代の親友
エピソード3「キャッチフレーズ」
「真理奈おめでとう!」
月一回開かれる三人での飲み会は大江を祝福することから始まった。
普段はお酒を積極的には飲まない大江もこの日は気分が良いのか、
甘めのサワーをハイペースで飲んでいた。
「今期は数字も厳しい状況だったから営業部もみんな喜んでて、
神様大江様ありがとうってみんな崇拝してたよ。」
「喜んでもらえるのは嬉しいけど、そこまで言われるとさすがに気が引けるかも。」
大江が考案したアイデアを基に商品化したものがヒットして、
右肩上がりに月々の売上を伸ばしていた。
今振り返ると、数カ月前はアイデアに行き詰り闇の中を彷徨っていた。
心の中を表すようにいつのまにか部屋の中も物で溢れている状況だったので、
休日に思い切って断捨離をすることにした。
いつか使うだろうという考えのもと、物をなかなか捨てれなかったが、
思い切って物を捨てることで気持ちがリセットされる気がした。
いつか読み返すかもしれないと置いていた小説や
ここ数年着ていない洋服を迷うことなく処分し、
その勢いのまま引き出しの奥に入っているものを捜索すると、
大学時代に使っていた手帳が出てきた。
なんでこんなもの捨てずに置いてるんだろうという疑問を抱きつつ、
興味本位で中を見てみた。
大学の授業のスケジュール、アルバイト、
友達との予定などが限られたスペースの中に書かれていて、
さらに全てが黒のボールペンだったこともありとても見づらかった。
もっと見やすく、スケジュールを書き込むのが
楽しくなるような手帳があればいいのにな、
消費者としてそう思った。
手帳にも様々な種類があるが、差別化は難しく、
毎年違う種類の手帳を使っている人も多くいるのではないだろうか。
携帯でスケジュールを管理するのではなく、
手帳を使ってもらうことは文具メーカーにとって大きな課題だった。
女性にターゲットを絞った手帳は
潜在的な需要があるという直感的なひらめきを信じて
大江は商品開発に着手し始めた。
手帳のスケジュール欄を
予定で埋めたくなるようなアイデアを色々と考えた結果、
絵文字スタンプを別売りで販売してみるのはどうだろうと思った。
家族で旅行に行く、
友達と遊ぶ、
デート、
アルバイト、
給料日などを表した
スタンプを組み合わせることで
見せる手帳にカスタムできることが
女性の心を揺さぶるのではと淡い期待を抱いていた。
まずは普段手帳や携帯にどういった
スケジュールを書き込んでいるのかをリサーチするために、
社内の女性社員に協力してもらって実際に見せてもらった。
私自身はそんなに色んなところに出かけるわけではないので、
同じようなことしか書き込んでいないが、
人によって生活スタイルが異なれば当然多種多様な予定が存在する。
社内のイラストレーターと連日打ち合わせを重ね、
代表的な予定の絵文字スタンプの試作品を作り続けた。
まずは試作品を今自分が使っている手帳で利用してみたところ、
見た目がカラフルで華やかになり、
スタンプを押すためにスケジュールを入れたいという思いになっていた。
プライベートに関するスタンプだけではなくて、
仕事でその日までにやらないといけないことがあれば
「TO DO LIST」というスタンプを押して書き込むだけでも
やるべきことが明確になるのでそういう使い方もありだと思った。
スタンプを上手く活用した手帳作りもしなければならかったが、
そこまで手が回らない間に今月1回目の企画プレゼンの日が訪れた。
ターゲットとするお客さんはどんな人か、
他社とどうやって差別化を図るか、
といった質疑応答に答えたり、
試作品を使ってのビフォーアフターを実際に見てもらうことで、
商品としての価値を伝えた。
まだアイデアが固まっていないところもあったが、
商品開発部の女性陣からは工夫次第で面白い商品になりそうという声が上がり、
次回の企画プレゼンに向けて内容を詰めていくことが決まった。
その日の帰り道、
大江は自分のアイデアが次回のプレゼンのテーブルに
乗ったことに胸をなでおろした。
最寄り駅を降りたところにあるコンビニに立ち寄り、
自分へのちょっとしたご褒美にスイーツを買った。
最近は家でも手帳と向き合う時間が増えていた。
幸運なことに過去使っていた手帳を捨てずに置いていたので、
当時の出来事を思い出しながら
理想とするイメージを膨らまることが日課になっていた。
私は小さいときから本を読むのが好きだった。
成功している人がどのような人生を歩んでいて、
どういった考えで物事を判断しているのかを
知ることは私自身の好奇心を掻き立てた。
本の中で響いた言葉を手帳に書き留めることで、
実際に壁にぶつかったときに背中を押してもらったことがあった。
先日江戸川文具店を訪れたときに試し書きコーナーに
書いてあった言葉を今使っている手帳に書き留めていた。
「人生は苦労の連続である」
「苦労することは自分自身が成長するチャンスでもある」
「失敗を恐れるものに成功は訪れない」
「情熱が前へと進む原動力になる」
「常識はいつの日か常識ではなくなる」
商品開発部で仕事をしていて、
ようやく気付いたことがあった。
失敗することがダメなのではなく、
失敗を恐れて前に進まないことが私自身の大きな課題だった。
大江は小さなミスをしながらではあったが、
軌道修正を行いながら着実に自身の思い描く手帳を完成させつつあった。
2回目の企画プレゼンを迎える頃には
手帳と絵文字スタンプが実際の商品として販売できる状態で手元にあったので、
熱のこもったプレゼンをすることができた。
無事2回目の企画プレゼンを通過し、
次は店舗を限定しての販売に向けた準備へと進むことになり、
商品の企画責任者として他部署の人と連携を図りながら
各店舗での販売方法について話し合いを重ねた。
「真理奈とこうやって一対一で仕事の話をするのってなんか不思議な感じだね。」
「いつもはどうでもいい話でワイワイ盛り上がるために集まってるもんね。」
江戸川文具店での販売が決まったので、
営業担当である北野と社内で打ち合わせを行った。
「営業目線だと、女性は色々と商品を見て回ってから買う傾向にあるから、
印象に残るキャッチフレーズがあるといいんだけど。」
「なるほど、そう言われると難しいね。」
「もう一回手帳見してもらっていい?」
北野は絵文字スタンプが押されたカレンダーを見て、
「スタンプが押されてない日って寂しい気がするな。」
「そっか、そう言われると逆に目立つかも。」
「予定を入れたくなる手帳っていうキャッチフレーズどう?」
「それ面白いかも。」
大江との打ち合わせから数日後、北野は江戸川文具店を訪れた。
「店長、新商品持ってきました。」
「待ってたよ。さてさてどんな商品かな。」
北野は用意していたプレゼン資料を基に、
手帳と別売りの絵文字スタンプについて紹介した。
「予定を入れたくなる手帳ね。商品としては面白いけど、
手帳が売れる時期って限られてるから認知されるまでに時間が掛かるかもしれないよ。」
優しい口調だったが、
あまり期待しない方がいいかもしれないということをやんわりと伝えられた。
それから1週間後、普段はかかってこない山岸店長から電話があった。
「北野さん、至急でお願いしたいことがあるんだけど。」
それは北野にとって予期せぬ展開の序章に過ぎなかった。
エピソード4へと続く・・・
レベストジャー・グリーン
B・Iさん
文房具って本当に楽しいですよね。
グリーンが小さい頃は、
友達が持っていない文房具を
探したものです。
道具箱をアメリカのプラモデルの箱だったり
入手困難なガンダムのキャラ箱だったりと
結局!誰もグリーンのことなど
眼中にはないんですけどね(*´艸`*)
象が踏んでも壊れない筆箱とか古~~~!!
あっ!いろいろな機能がある多機能筆箱も流行った!
学校におもちゃを持っていったらダメなので
フェルトや紙でその頃に流行っていたキャラなどを
作って持っていたりとかしていたな(*´艸`*)
たのしかったわ~~~(*´艸`*)
手芸大好きグリーンでした!!!
編集戦隊レベストジャー!! !!!
投稿者プロフィール
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* * * * *
新メンバーで業務部の「B・I」こと大島知弥。月初のブログ当番。彼が書く文章は実話に基づきながらもどこか小説風。しゃちょーから月初当番を任されるのには頷けます。資格試験の猛勉強も継続中!
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コメント
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新しい文房具ってワクワクする。
手帳もその一つ。
毎年、年の後半になると新しい手帳に変えてしまうので古い方の12月って使わないことがちょっと勿体ないような気がしてる。
最近じゃ10月始まりの手帳とか…
そのうち半年手帳で良いんじゃないかと。
手書きの良さはシール貼ったり遊べることかな。
スマホの手帳は家族でスケジュールを共有したり、クラウドなので紛失の心配がないし、リスケが簡単で…
そういえば学生の頃は手帳を一言日記帳にしてたな。
それも今はTwitterで済んじゃう?!
毎年10月ごろは雑貨屋や本屋に手帳が並んでいるのを見て
どれにするか迷っています。趣味の予定等を書き込むのに
特化した手帳など、最近は新しい視点からのおもしろい機能が
どんどん追加されていくのを見ているだけでも楽しいです。
昔は毎年手帳を買ってましたね
システム手帳を持つことが多かったです
ちょっとお高めのやつをかっこつけて
まったく使わない月と週のスケジュール帳とか
真っ白なまま1年終わるんですけどねw
本文にあるように
今はスタンプで枠作ったりするやつが
ありますよね
そういうの良いなぁ。。。と思いながら
Googleカレンダーに。。。