2020年12月1日　B・I　
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「あれ、これだけしかなかったっけ？」

この時期にしては季節外れの暖かさが続き、

冬服を出していなかった私は

クローゼットの洋服を入れ替えていた。

冬服を全て出したにも関わらず、

何となく思っていたほどの量がない。

毎年そう思っては

服を買い足しているのだから不思議だ。

仕方がないので、今年も服を買うことにした。

ここ最近はネットで服を買うことも増えてきているが、

まずは色んな店舗に下見も兼ねて行くことにした。

実際に店舗をいくつか回って気づいたことは、

普段よりお客さんが少ない、

割引で値段が安くなっている、

そして何より嬉しかったのは

店員が話しかけてこないことだった。

どの店もソーシャルディスタンスを遵守しているのだろう。

それをいいことに、

一つ一つの商品をじっくり吟味しながら選んでいると、

ある店舗で「何かお探しですか？」と声をかけられた。

突然のことで少しびっくりして振り向くと、

真後ろに大男がピタッとついていた。

「近っ！」

危うく口から出そうだった。

「これから寒くなってきたときに着れるアウターを見て回ってます。」

「それでしたら、この辺りに並んでいるのが人気ありますね。」

「そうですよね。値段も安いですし、どんな服にも合わせやすそうなので、

いいなと思って見てました。」

その後、商品の説明を丁寧にしてくれたが、

あることが気になって説明が入ってこない。

最初に大男の顔を見たときから違和感があったが、

マスクが明らかに小さいのだ。

説明をしているとマスクがどんどん下に下がっていく。

「鼻が出ちゃうよ。」

そう思いながら顔を見ていると、

マスクの下から“ぶりん”と大きな鼻が出てきた。

予期せぬものの登場に笑いをこらえ、顔をそらした。

「色は黒だけしかないですか？」

「そうですね。ちなみに何色が希望ですか？」

「グレーとかあればと思っていたんですけど。」

「グレーだとそうですね・・・こちらなんかどうでしょう？」

いつの間にかマスクの位置が元に戻っている。

「一回着てみてもいいですか？」

「どうぞ。」

「少しサイズが小さい気がするんですけど。」

「今みたいにセーターの上に着ると、かさばるので小さく感じられるかと思います。」

ふと、大男の顔を見ると再びマスクから鼻が出かけている。

怖いもの見たさであの“ぶりん”とした鼻を

もう一度見てみたい気持ちと、

向かい合ったこの状況で見せられると

笑いを堪えきれないのではという気持ちが

自分の中で混在している。

大男はそんなこともお構いなしに

真っすぐこちらを見て話を続けている。

カウントダウンが刻まれるかのように

マスクが少しづつ下がっていく。

それを見ていた私は

真正面から受けて立つことを決めた。

しかし、あるところをさかいにマスクが下がらなくなった。

なかなか物事は思い通りにいかないと思い、

結局洋服も一度ネットを見てから決めることにした。

最後にお礼だけは言おうと思い、

大男が洋服を元あった場所に返すのを見ていた。

そして、振り向いたとき、“ぶりん”とした鼻が完全にマスクから顔を出していた。

このタイミングか・・・

思わず天を見上げ、深呼吸した。

ついつい漏れそうな笑いを利用して笑顔で感謝を伝えた。

あまりに鼻のインパクトが強かったのか、

家に帰ってからも鼻の形が脳裏に焼き付いている。

その後、ネットで色々と調べたが、

店舗で見たものと同じくらいの金額でこれといったものはなかった。

やっぱり来週あれを買うか・・・。

そして、あの店舗に戻ってきた。

少し遠めから覗いてみると、大男ではない男性店員一人だった。

今日は洋服だけ買ってさっと帰ろう。

一直線に先週見た場所に行くとお目当ての洋服がなかった。

「すいません。」

男性店員に声をかけた。

「先週ここにグレーのアウターがあったんですけど、もう売り切れてますか？」

「確認いたしますので、お待ちください。」

そう言って、裏へ消えていった。

その間、先週は見なかった商品を見ていると、

「お待たせしました。」と言われたので、振り返るとあの大男だった。

「近っ！」

危うく口から出そうだった。

「また、来ていただいてありがとうございます。」

「いえいえ。」

あれ、先週とどこか様子が違う。

マスクが大きくなっていることに気付いた。

鼻全部がしっかりと覆われている。

これであの印象的な鼻を見ることはないだろう。

「こちらが確か先週見て頂いたアウターですよね。」

「そうです。これで間違いないです。」

「念のためもう一度着てみますか？」

「そうですね。これってちなみにもうワンサイズ大きいのはありますか？」

「たしかあったと思うので、持ってきますね。少々お待ちください。」

そう言って足早に裏へと確認に行った。

この後の予定をどうするか携帯を見ながら待っていると、

大男が帰ってきた。

裏で何があったのかは分からないが、

“ぶりん”とした鼻がこんにちはしていた。

裏で何があったんだろう？

とにもかくにも1週間ぶりに再会できたことに、

なぜか嬉しさが込み上げてきた。

試着も終わり、お会計をしているときも、

私の目線はあの1点にしか焦点が合っていない。

大男が他のことに集中しているこの時間はチャンスタイムだ。

すると突然、大男が手でマスクを鼻の上まで上げた。

「あっ！」

つい声が漏れてしまった。

「どうかされました？」

「すいません。何でもないです。」

チャンスタイムが終わった。

目に焼き付けたことへの満足感に浸っていると、

大男が後ろを向いてくしゃみをした。

「失礼しました。」

そう言いながらこちらに振り返ると、

“ぶりん”とした鼻が最後の姿を見せてくれた。

「ありがとうございます。」

心の中で感謝した。

次の衣替えまでこの店舗に来ることはないだろう。

マスクの下に潜むものは次にどんな登場で、

そしてどんな姿を見せてくれるのか。

ふと冷静になると、

そんなことを考えている自分が少し気持ち悪く感じた。

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レベストジャー・レッド

B・Iさん

ぷりん！

大男のぷりん！！

どこのお店ですか！

その大男さんを観察したいです。

B・Iさんは幸せものだな～～！

もうそのお店にどうしても行ってしまう病になったりして

レッドは電車に乗ることが多いんだけれど

自分のことは棚に上げて色々人間観察するのが大好きです。

今度、一緒に幸せを探しに行きましょうよ！

結局どんなアウターを購入したんだっけ？？

編集戦隊レベストジャー！！！！！